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NFLと野球どっち選ぶ? 身体能力抜群のFA新人 [近藤 祐司]
2009年06月19日(金)

ペンシルバニア州立大時代のシロット。NFLとMLB、果たしてどちらを選択する?AP Images
ドラフトで指名されなかったNFLのフリーエージェント(FA)ルーキー達にとって、現在各チームで行われているミニキャンプは、7月末から始まるトレーニングキャンプに呼んでもらえるか最後のアピールの場となる。生き残りをかけたサバイバルレースの最終段階の今、米スポーツ誌スポーティングニュースで、一人のFAルーキー選手についての記事が掲載されていた。
「パンサーズのルーキー、アンソニー・シロットにはベースボールのプランBがある」、と題されたこの記事に登場しているのは、カロライナ・パンサーズのキャンプに参加しているアンソニー・シロット(22歳)だ。シロットは、先日、3日間に渡って行われたメジャーリーグのドラフト会議の最終日で、カンザスシティ・ロイヤルズに最後の50巡目で指名されたことが大きな話題となった選手である。
「とてもエキサイティングな気持ちになりました」と指名後に素直に喜びをNFLの記者たちに語ったシロットは、高校時代からニュージャージー州では有名なマルチアスリートだったという。アメリカンフットボールだけでなく、野球でも才能を発揮し、ピッチャーと三塁手として、高校3年の時にアトランタ・ブレーブスからドラフト指名を受けたほどの実力の持ち主であった。
シロットは当時、野球にするか、アメリカンフットボールにするかを迷い、家族で会議を重ねた結果、名将ジョー・パターノ監督のもとでプレイできて大学にも行けるということが決め手となって、アメリカンフットボールに専念するために名門ペンシルバニア州立大学へ進学することを決意した。
進学後、華やかなカレッジフットボールの舞台でも臆することなく、期待通りに成長をみせたシロットは、ビック10で2度オールスターに選ばれ、リーグを代表する大型セイフティとして知られるようになった。 2006年にはビック10インターセプト王となり、2008年はチームキャプテンを務めて、ローズボウル出場に貢献。低迷していたぺンシルバニア州立大フットボールの復活に大きく貢献した。
しかし、シロットは3年生の時に学外の暴行事件に絡んで有罪となったり、4年生のシーズン終盤に、太ももをケガする不運に遇ってしまう。結果、ローズボウルやオールスターに出場できず、スカウトが集結するコンバインやプロデイでもアピールできず、ドラフトの指名を見送られてしまう。
FAルーキーという立場上、シロットがパンサーズのロースターに残れるか否かは、スペシャルチームで活躍の場があるかにかかっている。だが、現在の段階では、夏に行われるトレーニングキャンプに呼んでもらえるかも決まっていないボーダーラインの選手である。
ロイヤルズに指名されたあとの記者会見では、「野球は、自分にとってのもうひとつのビジネスチャンスだと捉えている」と語っていたシロット。今後のプランについてNFLの記者団に聞かれると、「パンサーズを解雇されれば、まず、他のNFLチームをあたってみたいと思っている」と語った。さらに、意地悪な記者に「それでもNFLが駄目ならどうしますか?」と問われると、「すべてダメだったら、心機一転、プランBとして、メジャーリーグに挑戦します」と語ったという。そして最後に、「もしNFLの夢が叶わなくても、プロスポーツ選手になる夢は諦めないで頑張ります」と決意を語った。
高校生までシーズン制でスポーツを行うアメリカでは、シロットのような有能なマルチアスリートが数多く存在する。野球とNFLを両立させた名選手といえば、“プライムタイム”の愛称で知られたディオン・サンダース(元アトランタ・ファルコンズほか)が有名だ。プロになれるかどうかは、当然、その選手の運や実力にかかっている。しかし、アメリカのスポーツ界のこのような柔軟なシステムは、アスリートの「適材適所」や「人材の流動化」という観点からも、プロアスリートを目指す選手に多くのチャンスを提供し、一流アスリートの受け皿としても機能していることが分かる。
毎年、アメリカでメジャースポーツのドラフトが行われるこの時期に、このようなマルチアスリートを特集した記事を目にするたびに、新しいスターが次々と生まれるアメリカスポーツ界の豊かな土壌の秘密を垣間見る思いがする。
プロフィール

- 近藤 祐司[こんどう・ゆうじ]
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1974年 京都府生まれ
立命館大学パンサーズ時代のアメリカンフットボール日本代表の経験を活かし、独自の視点と感性をベースにした実況は、アメフト、野球、ロードレースなど、種目を問わず各局から定評を得ている。7年間の在米経験で得た英語力を武器にした海外取材力は専門記者をも圧倒する。日本では数少ないスポーツ専門のアンカーマン。
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