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華麗なる転身なるか、「グルーデン劇場」に注目 [近藤 祐司]

2009年05月29日(金) 17:46

ヘッドコーチ時代にはサイドラインで激を飛ばし続けたグルーデン氏。AP Images

ヘッドコーチ時代にはサイドラインで激を飛ばし続けたグルーデン氏。AP Images

 今シーズンから米スポーツ専門ケーブル局ESPNのマンデーナイトゲームの解説者として、昨年までタンパベイ・バッカニアーズのヘッドコーチを務めていたジョン・グルーデン氏(45歳)が担当することとなった。

 グルーデン氏といえば、ニックネームにもなったホラー映画のキャラクターである“チャッキー”に似た恐ろしい表情で、サイドラインから選手へストレートに感情を表現することがトレードマークの「劇場型ヘッドコーチ」であった。ここでは感情を露にする「激情」ではなく、“魅せる”要素も兼ね備えているので、あえて「劇場」という言葉を使いたい。しかも、パフォーマンスだけでなく、研究熱心で、鋭い観察眼も持っており、ヘッドコーチとしての実力も、NFLでは指折りだ。

 1998年、当時35歳の若さでオークランド・レイダースのヘッドコーチに就任すると、ベテランQBリッチ・ギャノンをウエストコーストオフェンスでうまく起用して、レイダースを3年連続プレイオフへと導いた。2002年に、コーチとしては異例なトレードという形でバッカニアーズのヘッドコーチに就任すると、1年目にいきなり史上最年少の若さでスーパーボウルチャンピンに輝き、一躍、時の人となった。(昨年、マイク・トムリンがその記録を更新)。近年、NFLで30歳代の若いヘッドコーチが多数誕生するようになった背景には、間違いなく、このグルーデン氏の成功が大きく影響したと言える。

 2002年には、雑誌“ピープル”の恒例企画「世界で最も美しい男50人」にNFLコーチとして初めて選出され、NFL史上稀に見る“ブロンドのイケメンコーチ”としても、ルックスでもその名を全米に知らしめた。

 このように、実力、実績、ルックスのどれをとっても超一流の「劇場型ヘッドコーチ」のグルーデン氏こそが、今年に電撃的に引退を表明したNFL解説者の“横綱”、ジョン・マッデン氏の後継者としてふさわしい存在になるのでは? と私はひそかに期待を寄せている。

 今年のドラフト中継でNFLネットワークの解説者として初登場したグルーデン氏は、初めてとは思えない堂々とした態度で、かつ的確で、洞察力の鋭いコメントを連発した。それがESPNのプロデューサーの目にとまり、今回の大抜擢となったのだ。あのマッデン氏でさえ、78年の解説者デビュー当初はデーゲームであったことを考えると、いきなりゴールデンタイムの解説者に抜擢するESPNのグルーデン氏への期待の大きさが伝わってくる。

 だが、31年間ブースに座り続けたマッデン氏のように、解説者としての長いキャリアをグルーデン氏に期待してもいいのだろうか。ESPNで行われた就任会見で、グルーデン氏は「コーチ業にはまだ未練がある」と語り、いまのところ放送界に長く止まる気はないようなコメントを残した。来季以降の契約についての質問が及んでも、グルーデン氏は「第一に、俺は契約内容を公にすることはない。第二に、俺は人生において、常に短期のゴールを設定する人間だ! そして、第三に、一試合ずつ、精一杯取り組むことはこれまで通り変わらない」、とコーチ時代のようにエネルギッシュに語り、詳細については触れなかった。

 とにもかくにも、グルーデン氏のレギュラーシーズンのデビューは、第1週のマンデーナイトゲーム、ニューイングランド・ペイトリオッツ対バッファロー・ビルズとなる。昨年、怪我でシーズンを棒に振ったペイトリオッツのクオーターバック(QB)トム・ブレイディーの復帰戦と、“問題児”ワイドレシーバー(WR)テレル・オーウェンスのビルズでのデビュー戦として注目される一戦だ。「劇場型ヘッドコーチ」のジョン・グルーデン氏が「劇場型アナリスト」として、スムーズにコンバートできるかどうか? その第一声が、今から待ち遠しい。

プロフィール

近藤 祐司

近藤 祐司[こんどう・ゆうじ]
1974年 京都府生まれ
立命館大学パンサーズ時代はアメリカンフットボール日本代表を経験。独自の視点と感性をベースにした実況は、種目を問わず定評を得ており、NFL、 NCAAフットボール、NBA、MLBの全てで、チャンピオンシップゲームを実況する唯一のアンカー。NFLはGAORA専属、NBAがWOWOW、NCAAフットボール、MLBではJ SPORTSと多チャンネルで活躍中。7年間の在米経験で得た英語力を武器にした同時通訳と海外取材力は専門記者をも圧倒する。日本では数少ないスポーツ専門のアンカーマン。
近藤 祐司オフィシャルサイト
近藤 祐司のtwitterはこちら>>

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