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日本人初のNFLに近づいた男、河口正史が引退! [近藤 祐司]

2009年04月03日(金) 21:52

2002年に49ersのキャンプに参加した河口氏(右)。By: Brian Bahr

2002年に49ersのキャンプに参加した河口氏(右)。By: Brian Bahr

 日本人で初めてNFLに近づいた男、アサヒ飲料チャレンジャーズの河口正史選手が2008年シーズンを最後に現役生活を終えることを表明した。公式な記者会見などは一切設けなかったが、引退を決断した要因は「シーズンイン1週間前になっても、毎年シーズンが近づくにつれて感じていた“メラメラ感”がなくなったからだ」と本人は説明する。

河口の存在が、日本アメリカンフットボール界に与えた影響は計り知れない。大学卒業後の1996年に、NFLヨーロッパ(NFLE)に参戦して日本人プロフットボールプレイヤーの第一号となると、同リーグでは日本人最長となる7シーズンもプレイした。3年目には、日本人初の「オールNFLヨーロッパ」にも選出され、体格で劣る日本人も立派に海外で戦えることを証明した。2002年、2003年には、NFLのサンフランシスコ・49ersのトレーニングキャンプに招聘され、それまで日本人選手が想像もしなかったNFLという舞台に本気で挑戦した。最後は惜しくも夢破れるも、身体を張ってNFLに挑戦するその姿は、NFLそのものも動かし、後に“マーサ・ルール”といわれる海外選手育成プログラム「インターナショナル・プラクティススクワッド」をリーグが創設するきっかけにもなり、日本の後輩たちに道を切り開いていった。

 河口のフットボーラーとしての素顔は、もって生まれた“天才型”ではなく、徹底的な負けず嫌いの性格の“努力型”であったと言える。大学時代から河口は何事も勝負に徹底的にこだわった。フットボール選手にとって最も屈辱的な“あおてん”(相手に仰向けに倒せれること)を食らった日などあれば、「悔しくて、次にやり返す日まで夜に寝つけなくなった」と本人がいうほど、どんな些細なことでも勝利にこだわり、負けることを極端に嫌う選手であった。 

 海を渡ると委縮してしまう日本人選手が多かった中、NFLEに参戦してからも、河口はその負けず嫌いな性格を発揮し、大胆にも、それをコーチやチームメイトに表現した稀有な日本人選手であった。むしろ、周囲のレベルが上がったことによって、負けず嫌いな性格が助長されていったようにも思えたほどであった。NFLE時代のチームメイトだった里見恒平(32歳)も「マーサは日本人やったけど、3年目くらいにはアムステルダム・アドミラルズのボスになっていた」と語ったように、負けず嫌いから生まれる貪欲な向上心は、本場のコーチや選手にも認められていった。 

 そんな河口が、今後、日本人初のNFL選手誕生のカギとなるのは、「フィジカル面よりも、海外でも自分の力を発揮できる語学力やメンタルタフネスによるところが大きい」と語るように、近年、日本人プレイヤーでフィジカルや技術で河口を上回る選手は出現するようになったが、河口のような図太いメンタルの強さを持った日本人プレイヤーは、まだ出てきていないのが現状かもしれない。   

 14年間の現役生活に終止符を打った河口の引退後のプランは、「アメリカンフットボールで得たトレーニング理論や知識を活かして、いろんなスポーツの選手と交流して、日本のスポーツ文化そのものの発展に少しでも寄与したい。」と語る。 

 プロリーグがないため、日本アメリカンフットボール界に大きな足跡を残したにも関わらず、引退セレモニーや記者会見もなく、静かにフィールドを去って行った伝説のラインバッカー河口選手に、スポーツアンカーとして、そして、同級生として、私も労いの拍手を送りたい。そして、これからのセカンドキャリアも、持ち前のガッツと負けず嫌いの性格を活かして、なにか大胆な行動力を期待したいと思う。

プロフィール

近藤 祐司

近藤 祐司[こんどう・ゆうじ]
1974年 京都府生まれ
立命館大学パンサーズ時代はアメリカンフットボール日本代表を経験。独自の視点と感性をベースにした実況は、種目を問わず定評を得ており、NFL、 NCAAフットボール、NBA、MLBの全てで、チャンピオンシップゲームを実況する唯一のアンカー。NFLはGAORA専属、NBAがWOWOW、NCAAフットボール、MLBではJ SPORTSと多チャンネルで活躍中。7年間の在米経験で得た英語力を武器にした同時通訳と海外取材力は専門記者をも圧倒する。日本では数少ないスポーツ専門のアンカーマン。
近藤 祐司オフィシャルサイト
近藤 祐司のtwitterはこちら>>

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