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薬物で揺れる米スポーツ界、NFLコミッショナーの決断は? [近藤 祐司]

2010年03月05日(金)

その対応に注目が集まるグッデル・コミッショナー。AP Images/Paul Spinelli

その対応に注目が集まるグッデル・コミッショナー。AP Images/Paul Spinelli

 あの渦中の人物、プロゴルファーのタイガー・ウッズも顧客にするカナダ人医師が、HGH(ヒト成長ホルモン)を使用してアメリカ国内で違法な医療行為を行っていたことが報じられた。落ち着いたかに思えたプロスポーツ選手のドーピング問題が、アメリカで再び表面化し、それぞれのリーグが対応を迫られている。

 カナダ人医師は、ウッズをはじめ、多くのエリートアスリートを顧客に持っている回復治療のスペシャリスト。捜査線上には、様々なリーグに所属する選手の名前が浮上し、複数のNFL選手の名前も含まれていると報じられているのだ。

 ステロイドは筋肉量を増強することで知られるが、今回の事件で広く知られるようになったHGHは、アスリートの怪我の回復を大幅に早めるとさせる薬物と言われる。リハビリなどで使用すれば、大きなアドバンテージを得られる魔法の薬である。

 HGHは、アメリカ国内では、成長障害がある小児や小腸の除去手術を行うなどして急激に体重が減る心配がある方のみに処方が限定されており、アスリートの怪我の回復を早める目的での使用は違法とされている。

 同医師は、世界のトップアスリートの間では「ミラクルマン」(奇跡を起こす人)として知られていたという。そのカナダ人医師が独自に開発したPRP療法(血小板を増強する効果があるといわれるプラズマ療法)をすれば、怪我の回復が3倍から10倍に早まると言われ、一刻も早くフィールドに戻りたいと願う選手達にとって、魔法使いのような存在だったのかもしれない。ギャレア医師の治療を受けたことがあるメジャーリーガーの証言によると、身体の血を少しずつ抜き取り、それをミキサーのようなものにかけて有効成分を加え、再び身体に戻す治療を行ったという。

 そして、つい最近、イギリスでも、プロラグビー選手が抜き打ちの血液検査でHGHが検出された。同選手はイギリスアンチドーピング機構から2年間の出場停止処分を受けて、チームからも解雇されたというニュースが世界的に大きな話題になった。この血液検査の方法は、アテネ、トリノ、北京、バンクーバーなど過去4大会の五輪でも実施されており検査の信頼性も高い。今回、HGHが検出された初のケースとなったという。

 この事件を受けて、アメリカでは、早速、メジャーリーグ機構のバド・セリグ・コミッショナーが、選手が選手会に所属しないマイナーリーグで、今年からHGHの血液検査を行うことを発表するという迅速な行動をとった。しかし、NFLはというと、新たなルールは全てNFL選手組合に同意を得なければならない。現段階では、何もアクションができていない状況だ。新たな労使協定の中に、血液検査を条項として入れるかどうかも、両者がまだ合意に至っていないひとつ大きな要因とされている。 

 前回のステロイド問題では、その対応の悪さを理由にメジャーリーグが公聴会でやり玉に挙げられたが、今回のHGHの件では、NFLが対応で後手に回ったことになる。リーグとしての信頼を確固たるものにするため、今後のロジャー・グッデル・コミッショナーの対応は大きな注目を集めている。

プロフィール

近藤 祐司

近藤 祐司[こんどう・ゆうじ]
1974年 京都府生まれ
立命館大学パンサーズ時代のアメリカンフットボール日本代表の経験を活かし、独自の視点と感性をベースにした実況は、アメフト、野球、ロードレースなど、種目を問わず各局から定評を得ている。7年間の在米経験で得た英語力を武器にした海外取材力は専門記者をも圧倒する。日本では数少ないスポーツ専門のアンカーマン。
近藤 祐司オフィシャルサイト
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