コラム

RSS

サラリーキャップ消滅がもたらすNFLの変化 [生沢 浩]

2010年02月25日(木)

 ついにサラリーキャップ制のないシーズンが始まる。今年のフリーエージェント(FA)制度が解禁になる3月5日までに、NFLとNFLPA(選手会)が新しい労使協約(Collective Bargaining Agreement=CBA)を結ばない限り、1993年以来初めてチームの払う年俸に制限のないシーズンが到来する。

 チームが選手に払う年俸総額に上限を設けるサラリーキャップと、選手の移籍をより自由化したフリーエージェント(FA)制度は、現行CBAの二本柱だ。このふたつの制度がNFLの戦力均衡と競争激化を支えてきたと言っても過言ではない。

 現行CBAは1993年に施行され、現在まで幾度かの更新を見てきた。最後の更新は2006年で、このときはCBAが2012年まで有効と決められた。ところが、この協約にはオーナー側に最終2年を放棄する権利が付帯されており、それが2008年に行使されて協約は2010年シーズンいっぱいで満期を迎えることになった。

 オーナー側が最終2年を放棄したのは、リーグ総収入の60%を選手に供給するという条項を「負担が大きすぎる」としたためだ。2008年以降NFLとNFLPAはCBA更新に向けて協議を続けてきたが、現在に至るまで新協約は結ばれていない。CBAでは協約の最終年はサラリーキャップ制を適用しないと定められている。すなわち、3月5日に始まるNFLの2010年シーズン(NFLではFA解禁日に新たな「リーグイヤー」が始まり、この日から正式に新シーズンとなる)は、サラリーキャップ制が効力を失うということだ。

 サラリーキャップ制が適用されなければ、各チームは高額年俸でFA選手を好きなだけ獲得できると思われがちだが、実はそれほど話は単純ではない。CBAでは協約最終年のFA制度についても細かい規定を設けている。

 FAには条件付FA(restricted FA=RFA、移籍の場合は旧チームがドラフト指名権などの補償を得られる。また、獲得を希望するチームが提示した契約と同内容のもので慰留が可能)と完全FA(unrestricted FA=UFA、選手は自由に新チームと契約ができる)の2種類がある。サラリーキャップ制度下では選手はNFL在籍3年でチームとの契約が切れた場合にRFA、4年以上でUFAとなる。しかしサラリーキャップ制度が適用されない場合は、RFAがNFL在籍3年以上5年以下、UFAは6年以上と資格取得に必要な期間が延長される。

 例えばレッドスキンズのクォーターバック(QB)ジェイソン・キャンベルはNFL在籍5年でチームとの契約が満期を迎える。サラリーキャップ制度下ではUFAとなるが、キャップが適用されない場合はUFAとなるには1年足りず、RFA扱いとなる。キャンベルを獲得したいチームは、レッドスキンズにドラフト1巡と3巡の指名権を譲渡しなければいけなくなるのだ。

 FAを獲得しようとするチームには、さらに「ファイナルエイトプラン」と呼ばれる規制が加えられる。前シーズンにプレイオフ進出した8チーム(2009年はAFCはコルツ、チャージャーズ、ジェッツ、レイヴンズ、NFCはセインツ、バイキングス、カーディナルス、カウボーイズ)については、獲得できるUFA選手の数に制限を設けるものだ。

 さらにカンファレンス・チャンピオンシップに進んだ4チームについては、獲得できるUFA選手の数は自チームのUFA選手の数が上限とされる(例えばセインツの場合、2月23日現在で11人)。ただし、これらのチームは自チームのUFA選手を失わない限り新たなUFA選手を獲得することはできない。

 ディビジョナル・プレイオフで敗退した4チームについても自チームのUFA選手数が上限となるのは同じ。ただし、失った自チームのUFA選手の数に加えて年俸によってさらに選手を獲得することが許されている。具体的に言うと、契約初年度の年俸が550万ドル(約5億円)以上のUFAについては1人だけ、370万ドル(約3億3000万円)未満のUFAについては人数の制限なく獲得できる(ただし初年度年俸370万ドル未満の場合には翌年以降の年俸アップ額に制限が設けられる)。

 サラリーキャップ制が適用されなくても、リーグの戦力均衡を保とうとする条項は依然として効力を発揮する。しかし、FA移籍が従来よりも難しくなる印象は否めない。選手の移籍が鈍化すれば、それだけ均衡が崩れて戦力格差が生まれる可能性もある。

 それでなくとも、各チームは昨今の不況の影響で大型契約は回避したい意向だ。スティーラーズは自主的にサラリーキャップを設けると発表し、カウボーイズも大型契約は結ばないと宣言した。こうした動きが高年俸の選手の「失業」を招き、ひいてはリーグ全体のレベルダウンにつながるのではないかとの懸念もある。サラリーキャップ制が適用されないシーズンは、NFLに新たな局面を生むのである。

プロフィール

生沢 浩

生沢 浩[いけざわ・ひろし]
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部主任。編集プロダクション『InsideBlitz』編集主幹。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。本業の傍ら、『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NFLは1993年から毎シーズン現地で取材している。現在、NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。
生沢 浩のコラムはこちら>>

PR

クイックアンケート(7/28更新)

映画「しあわせの隠れ場所」の題材となったマイケル・オアー。今季の活躍は?

スーパーボウルMVP級の活躍
プロボウラー級の活躍
全試合で先発出場
投票せずに結果を見る

オフシーズンのTV放送

日テレG+


GAORA


NFLモバイル 月額:315円(税込)

QRコードで今すぐアクセス
日本公式携帯サイトには、スコア速報、動画や待受け、ニュースなどNFLの最新情報が満載!モバイル限定コンテンツも必見! 
携帯サイトの内容を詳しく見る
■URLを携帯に送信
@

フォト

NFL JAPAN通信

NFL、アメフト情報満載!
購読無料のメールマガジン

今すぐ登録